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栗原社会保険労務士事務所

地震発生時に怪我をした場合の労災保険給付の取り扱い

☆名南経営のブログに、今回の地震で怪我をした場合の労災保険給付の取扱いがまとめてあります。
 

引用・転載歓迎とのことなので、下記にその全文を転載します。

東日本大地震では、震度が大きい地域が広範囲に亘り、また地震発生時刻が午後の時間帯であったことから業務中に被災し、怪我をしたいというケースも少なくないと思われます。このように業務中に地震が発生し、怪我をした場合等の労災の取り扱いについて、地震当日の3月11日に「東北地方太平洋沖地震に伴う労災保険給付の請求に係る事務処理について」という通達が発出されました。

 この通達では今回の地震に伴い、労働者が被災した場合の労災保険給付の請求にかかる業務上外の考え方については、平成7年1月30日付けの事務連絡「兵庫県南部地震における業務上外等の考え方について」(以下、「事務連絡」という)に基づいて判断を行って差し支えないとしています。この平成7年の事務連絡では、地震発生時の労災給付に関する基本的な考え方を「天災地変による災害に係る業務上外の考え方については、従来より、被災労働者が、作業方法、作業環境、事業場施設の状況等からみて危機環境下にあることにより被災したものと認められる場合には、業務上の災害として取り扱っているところ」であるとし、その別添において具体的事例も取り上げながら、以下のようにまとめています。

業務災害
 地震により、業務遂行中に建物の倒壊等により被災した場合にあっては、作業方法や作業環境、事業場施設の状況などの危険環境下の業務に伴う危険が現実化したものと認められれば業務災害となる。
<事例1>作業現場でブロック塀が倒れたための災害
 ブロック塀に補強のための鉄筋が入っておらず、構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。
<事例2>作業場が倒壊したための災害
 作業場において、建物が倒壊したことにより被災した場合は、当該建物の構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。
<事例3>事務所が土砂崩壊により埋没したための災害
 事務所に隣接する山は、急傾斜の山でその表土は風化によってもろくなっていた等不安定な状況にあり、常に崩壊の危険を有していたことから、このような状況下にあった事務所には土砂崩壊による埋没という危険性が認められたので、業務災害と認められる。
<事例4>バスの運転手の落石による災害
 崖下を通過する交通機関は、常に落石等による災害を被る危険を有していることから、業務災害と認められる。
<事例5>工場又は倉庫から屋外へ避難する際の災害や避難の途中車庫内のバイクに衝突した災害
 業務中に事業場施設に危険な事態が生じたため避難したものであり、当該避難行為は業務に付随する行為として、業務災害と認められる。
<事例6>トラック運転手が走行中、高速道路の崩壊により被災した災害
 高速道路の構造上の脆弱性が現実化したものと認めら、危険環境下において被災したものとして、業務災害と認められる。

通勤災害
 業務災害と同様、通勤に通常伴う危険が現実化したものと認められれば、通勤災害となる。
<事例1>通勤途上において列車利用中、列車が脱線したことによる災害
 通勤途上において、利用中の列車が脱線したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであることから、通勤災害と認められる。
<事例2>通勤途上、歩道橋を渡っている際に足をとられて転倒したことによる災害
 通勤途上において、歩道橋を渡っている際に転倒したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであることから、通勤災害と認められる。

 これらの事例は、労災と認められる場合の事例となっていますが、あくまでも単に地震で被災したような場合は業務起因性が否定され、労災の給付がなされないという原則を押さえた上で、そもそも一定の危険な状態が存在した場合に業務起因性が認められるという判断を行うことが求められます。現実には事案ごとに判断されるため、地震発生時に怪我をしたことを一律に判断するのではなく、地震発生前の状況もヒアリングし、適切に処理することが求められます。 (3月17日:名南経営ブログより)